モノポールとD3ブレーン

 マクスウェル方程式の電磁双対性は、電荷と電場とは別の場所(光媒質の内部)に磁荷と磁場をつくる。光媒質の内部は光が届かないので地平線の外部だが、磁荷がつくる磁場と荷電粒子は地平線上で相互作用をして U ( 1 ) ゲージ対称性を構成する。
 磁荷がつくる磁場 B rot A に等しいが、この A は光媒質の外部では見えないので、荷電粒子の U ( 1 ) ゲージ対称性により消える。すなわち、 A はゲージ変換の任意関数 χ を用いて、 A = grad χ である。ただし、ストークスの定理により A は特異点を持つので、その特異点を含む領域に別のベクトルポテンシャル A0 を考え、 A - A0 = grad χ B = rot A B = rot A0 とし、 A0 0 にする極限で、 A = grad χ が成り立つと考える。(この場合、厳密にはこの式(完全微分)が成り立たないので、 χ は多価関数である。)このゲージ変換を荷電粒子に行うと、荷電粒子のハミルトニアンの中の微分は、 x i - i e c A i A = ( A 1 , A 2 , A 3 ) に置き換わり、荷電粒子の波動関数は、 exp ( i e c χ ) ψ に置き換わるが、次式 e c χ = 2 π n が成立するとき、 U ( 1 ) ゲージ対称性が成立し、 A は(光媒質の外部から見て)消えるように見える。ただし、 n は整数である。(波動関数につく位相因子は多価なので、位相因子どうしの割り算が一般に1にはならないことに注意する。)
 磁荷 g がつくる磁場 B は、電磁双対性によりガウスの法則を満たす。すなわち、 4 π g = S B · d S = S rot A · d S = C A · d r = C d χ = c e 2 π n が成立する。ただし、ストークスの定理の閉曲線 C A の特異点のまわりを回る無限小ループであり、 C を境界とする曲面 S は特異点を含まない。また、最後の式は 1 の定積分 χ ( a ) - χ ( a ) における χ ( a ) C の途中経路に依存して多価になることを表す。ガウスの法則は S の形に依存しないので、 n S の変形にともなう C の変形( C の連続変形)に対して不変な位相不変量( C が特異点のまわりを回る回数)であり、モノポールの数である。上式より、ディラックの量子化条件 g = c 2 e n を得る。(モノポールと光は光媒質の内外の境界上で因果的に相互作用する。ただし、光媒質の内外とその境界は空間の1点を共有する。)
 磁荷と荷電粒子の関係は、重力モノポールと物質との関係に置き換えることができる。物質に行うゲージ変換の任意関数 χ が多価関数のとき、重力モノポールの質量がつくる A grad χ に等しいが、これは光媒質の外部から見ると U ( 1 ) ゲージ対称性により消えて見える。(ただし、この U ( 1 ) ゲージ対称性は、局所ローレンツ系にある物質がつくる重力場に由来するマクスウェル方程式(局所ローレンツ系の重力波)にもとづく。)すなわち、物質にゲージ変換を行うと、物質のハミルトニアンの中の微分は、 x i - i m c A i A = ( A 1 , A 2 , A 3 ) に置き換わり、物質の波動関数は、 exp ( i m c χ ) ψ に置き換わるが、次式 m c χ = 2 π n が成立するとき、 U ( 1 ) ゲージ対称性が成立し、 A は(光媒質の外部から見て)消えるように見える。ただし、 m は物質の質量である。
 重力モノポールの質量 m D がつくる磁場の類似物 B は、電磁双対性の類似によりガウスの法則を満たす。すなわち、 4 π G m D = S B · d S = S rot A · d S = C A · d r = C d χ = c m 2 π n が成立する。ただし、重力モノポールの数 n は閉曲線 C の連続変形に対して不変な位相不変量( C が特異点のまわりを回る回数)である。上式より、ディラックの量子化条件の類似物 m D = c 2 G m n = m p 2 2 m n を得る。(重力モノポールは物質宇宙ではDブレーンであり、その数 n SU(n) ゲージ理論に対応する。このゲージ理論は物質の質量 m に由来する。)
 Dブレーンの質量 m D は、超弦理論では、Dブレーンの張力と体積から決まる。すなわち、 m D = V g l p + 1 c である。ただし、 V はDブレーンの体積、 g は弦の結合定数、 l は弦の長さである。 V l を定数とみなすと、 m g は同一視できるので、2個の質量 m がつくる重力と2個の結合定数 g がつくる重力を同一視できる。すなわち、2個の質量 m のあいだの距離 R をつぎの式で定義できる。 G m 2 R = G s m p 2 R 7 ただし、 G s は超弦理論の重力定数であり、 G s = c 3 g 2 l 8 を満たす。張力と体積が定めるDブレーンの質量とディラックの量子化条件から m 2 g 2 の関係が得られるので、それを R の定義式に代入すると、 V = l p - 3 R 3 2 を得る。この体積を用いてDブレーンの質量を求めると、 m D = V g l 4 c V = R 3 2 である。したがって、ディラックの量子化条件を満たすDブレーンはD3ブレーン( p が3のDブレーン)である。
 D3ブレーンと N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論(物質とゲージ場)は電磁双対性の類似(S-双対性)で連結するが、D3ブレーンとブラックホールはミクロとマクロの関係で連結する。これは N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論とブラックホールの連結(AdS/CFT対応)を意味する。同様に、位相的弦理論のAモデルとBモデルはT-双対性で連結し、Aモデルのインスタントンと弦の相関関数はミクロとマクロの関係で連結する。これはBモデルと弦の相関関数の連結(ミラー対称性)を意味する。
 D3ブレーンと N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論のS-双対性とAdS/CFT対応を組み合わせると、D3ブレーンや N = 4 超対称ヤン・ミルズ理論の自己S-双対性を得る。この自己-S双対性はIIB型超弦理論のS-双対性と結びつくが、これはM理論によりIIA型超弦理論とIIB型超弦理論のT-双対性(ミラー対称性のT-双対性)と結びつく。

公開日2024年09月20日
最終更新日2025年11月10日
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